
退院後、心配事がありました。
右手が動きづらくなってしまったこと?
これから先の人生を一人で過ごさなくてはいけないこと?
それらのことも、常に頭を巡る悩みではありますが、絶対に対峙しなければならないこと
運転免許更新
です。
脳梗塞と心臓手術をした私が、どう行動して無事に免許を更新することができたのか。
以下に記録しました。
はじめに
道路交通法は頻繁に更新されています。
そのため2014年当時に体験したことが、現在、適用される手続きと変更になっている可能性があります。
また、あくまでも脳梗塞、心臓手術を乗り越えたものの運転免許更新体験談として捉えていただけますようよろしくお願いします。他の病気の方には全く当てはまらないこともありえます。
更新した場所
当時の私は違反運転者でした。そのため更新場所は試験場を選ぶしかありません。
選択の余地なく場所が決まっていたのですが、違反していなくても、以下の思いをもって試験場へ向かうことを決めていました。
更新前の思い
回復が見えてはいるが、右手が稀に震えるような状態で運転を続けていていいのか?という心配があった。慢心して運転してしまい、事を起こしてからでは取り返しがつかないため警察の判断を仰ぎたいと思っていた。(ダメだと言われたらすっぱり諦めようという思い。)
自身が持てず、一度は運転を諦めた
退院して、それほど遠くない時期に主治医から運転の許可はもらっていました。
様態が安定し、自宅近くの医院へ診察を切り替えられる前のことですから、2012年くらいの出来事です。
許可は得たものの、運転の練習をしていて不安を抱くことがありました。
車通りの少ない夜に運転をしていたとき、手が動きづらいためハンドルが切りづらいことがあった。おまけに、緊張からくるのか右足が震えることがあって、ブレーキを踏んでいる足が、がくがくしていたこともありました。
さすがに、ペダルを踏み間違えることはありませんでした。それでも、自信を持った運転とは程遠いものでしたね。
医師から運転の許可を得ているといっても、それは心臓血管外科の先生から与えられたものです。運転への不安の原因、自覚症状は脳から来ているもの。そんな思いが心にあったのだと思います。
そのせいで心臓血管外科の先生に運転の許可をもらっても不安があったのかもしれません。
自信が持てないのなら、 運転するべきでない。
と判断し、一度は練習をやめ、運転することをやめました。
とにかくリハビリを続けた
「万が一にも誰かを巻き込むような事故を起こしでもしたら取り返しがつかない…」
と、自信を持てず運転を自粛。
そんな心境になっても、運転を諦めたわけではありません。体の動きを更に改善しようと、とにかくリハビリに勤しみました。かなり苦しい思いをしたことを思い出します。再び運転できるようになりたいという思いが苦しさを相殺したのかもしれません。
自信を持って運転できるように戻りたい。と願い続けてリハビリをしたおかげか、少しずつ手の震えが収まっていきました。
震えが収まり、夜中に短距離の運転を再開。繰り返し練習を続けることで、全く人がいない夜中の短時間なら運転できる自信がついていました。
それでも、免許の更新となると別の話です。
入院の経験があると、更新手続きで大変なことがあるかもしれない。言葉がきちんと発声できない上、動きに緩慢な部分もあります。
自信はついてきたものの「これじゃあ更新不可かもしれない。」という心配が消えることはありませんでした。
神経内科の先生にいざといときのためにお願いをした
時間の猶予がなくなってきた頃、半年に1回のMRI検査をすることになりました。
MRIの検査をするときは、必ず神経内科の診察がセットになっていたので、試験場に行く前に神経内科の診察を受けておくことに。
前述したように、心臓血管外科の先生よりも神経内科の先生の方が、動きづらくなった体についてはプロフェッショナルだと思っていますから、不安を消すために質問をしました。
以下、返答の要約です。
「脳のMRIの画像を見たところ、症状が悪くなるわけでもないし、震えも確実におさまっている。かといって以前のように素早い動きを取り戻したわけではないし、それが一朝一夕に劇的に良くなることはない。梗塞の跡、出血の跡は残っているが新たな悪い変化は見当たらない。MRIの検査は今回でおしまいにしよう。」
一番心配していた脳の状態についてお墨付きをもらえた。まずは一つクリア。
つづけて、運転免許更新の話をする、
「てんかん症状があるわけでないし、右手の震えもおさまっているから問題ないよ。」
安心できる回答をもらうことができた。
それでも、
試験場で予測してない質問が来たらどうしよう。。
と、心配を消すことができなかったので、
「問題ないと思いますが、試験場で診断書が必要だと言われたら一筆書いていただけますか。」
と念のためお願いをした。
事態がこじれた時は、すぐに対応していただける旨を取り付けて先生との会話は終わりました。
いざというときの保険を作っておきます。
ついに試験場に向かう日がやってきた
到着してから書類を記入するまで
当日になっても不安を消すことはできませんでした。
しかし、不安な気持ちだけをを持って向かったら悪い結果になるかもしれない。
ネガティブな感情に心を支配させず、開き直って、更新できなかったら神経内科の先生にお願いして書類を作ってから出直せばいいか。くらいのラフな気持ちも同時に心に留めておきました。
更新のお知らせハガキに
手続きの前までに、病気などお身体に変化があった方はお申し出ください。
と記載があったので、最初にに総合受付へ向かいました。
受付にいたのは女性。元気な頃ですら女性に対して緊張していたのに、言葉が出なくなっていた私は前にも増して緊張している有様。
そんな気持ちが伝わったのかわかりませんが、私の心配をよそに、受付の女性は分かりづらい私の言葉を丁寧に聞いてくれました。(ホッとした。)
真剣に聞いてくれるのに、私のしゃべりではうまく伝えることが難しいことに歯がゆさを覚えもどかしく、申し訳なくなりながら、
「3年前に倒れて(2014年当時から見て)、その時に数日、意識不明になりました。」
と、伝えると
更新の手続きをする、窓口に申し出てください。
と指示をいただいたので舞台を窓口のあるフロアへ移します。
提出用に(違反運転者なので4,000円分の)証紙を購入し、申し込み用紙に必要事項を記入をはじめる。
用紙に目を通していると、最近、法律が変わったようで、裏面に以前は見なかった、過去3年を振り返って意識を喪失したことがあるか?、病気をしたか?などチェックをするところが増えていました。
項目を順に確認していた時、私の中で悪い考えがささやきました。
「外から私を見れば死にかけたようには見えない。嘘の申告をすればだまって更新できるんじゃないか。」
面倒な手順を避けて、手続きを簡略化できるかもしれない甘美な囁き。
しばしの葛藤の後、良心が勝利。(小心者なので破天荒なことをする勇気がない。)
虚偽の申告をしたと後からバレてしまうよりも、最初から正直に申告した方が、ストレスにならないこと。正直に申告した結果、更新できないのなら、仕方ないことだと心を決めありのままを書きました。(あとからわかったことですが嘘の申告をした場合、罰則があるそうです。)
申請窓口に書類を提出
悩みながら作成した書類を提出。
窓口の女性が用紙の裏面を確認し、病気の申告を確認。
「別室で話を伺います。」
長蛇の列の横で見世物のように、長い時間、別室に通されるのを待っている私。ここは、恒常的に混んでるんです。空いているのを見たことがありません。
長い時間待っていると係りの人が迎えに来てくれました。
普通に更新できる場合、入ることはない別室に通された。緊張しないわけがありません。
上手に伝わるように話すことができるだろうか。
その気持の高ぶりと重なり、移動しているとき鼓動が高まっていました。
しかし、倒れる前にしていた仕事柄、警官と話すことが頻繁にあった私は、状況にすぐ慣れました。後ろめたいことは何もないですし、普通にしていればいいんです。
多くの質問と受け答えをしてきました。それは次の項で
別室で行われた質問のやりとり
対面で話し合いを行いました。
かなり長い時間を費やしたため、全てを残すと長くなってしまいます。質問を箇条書きにしますね。
- 倒れてICUに運ばれたときの状況
- 入院していた病院の名前
- 主治医からは運転することに対して、どんな説明を受けているのか?
- 脳の状態は完治しているのか?
質問されたことに、たどたどしくも自分の口、言葉で回答していく。
ゆっくりとしか話せないため、話の時間がいたずらに長くなってしまいました。時間はどんどん過ぎていくのに許可が一向におりません。経過時間が増えると同じく、自分の説明だけでは、どうにもならないという思いも増加していきました。
事態の打開を狙って、次のように伝えました。
「医師の許可は得ているけど、必要なら医師に一筆書いてもらって出直してきます。」
それでも打開する気配がなければ、医師にお願いした書類をもらって出直そうと腹をくくっていたら、
- 言葉は出にくいながらも判断能力に問題はないこと
- 運転操作に必要な足の動きに問題はないこと
- 手の震えなど目立った身体的な要因も見受けられない
との判断をいただき、更新の許可をもらうことができました。
許可を得るにあたって、ひとつだけ念を押されたことがあります。
上長に書類を上げて、質問したいことがあった場合、自宅に電話させてもらう。
更新したあとも暫くの間、電話がかかってくるかもしれないと緊張する日々が続くことは嫌なことですが、かかってきたとしても問題はないので了承。嫌だと言えば更新できなくなりますしね。
別室での会話は、これで終了しました。
部屋をあとにし、視力検査をして、写真を撮り、講習を受ければ、更新の手続きは完了です。このとき違反運転者の講習を初めて受けましたが、2時間は長かった…。とにかく長かった。もうあの講習を受けたくありません。
年を押された「自宅に電話をかけるかもしれない」話ですが、この記事を書いている2015年1月6日現在かかってきていません。折り返しの電話待ちで去年末(2014年末)は運転を控えていたけど、年が明けても連絡が来ないので、そろそろ運転してもいいんじゃないかと思っています。
この記事を移行した2016年3月現在も運転に支障は全くありません。大事を取って、疲れを感じる前に休憩をとるようにしたり安全運転を心掛けています。文章を見直した2016年8月8日時点で近くのスーパーに買い物に行ったり、近隣自治体の親戚の家へ高速経由で運転もしていますが全く問題はありません。ただ、万一のことを考えて常に安全運転を心がけています。
随分前になりますが、退院後2度めの更新を行ってきました。手続きはいたって通常。前回更新したあとの体調の変化のことを聞かれる覚悟で向かいましたが、その心配は無用でした。 次の更新は体調よりも視力が心配です。調べたところ私は不同視というやつみたいで、そろそろ覚悟を決めてコンタクトレンズを使わなければならないか?と考えています。
病気後の免許更新手続きを終えて
健康な時と比べて煩雑な手続きが必要でした。
法律が改正されたため、更新の際、病歴があると簡単に更新できなくなっています。京都で起きた「てんかん発作で事故を起こした」事例があるため、仕方のないことでしょう。
面談の途中で更新できないかもしれない。そんなふうに覚悟を決めかけましたが、
リハビリによって右手の震えを抑え、
自分の足で試験場まで向かうこと
が更新できた決め手ではないかと今では思っています。
もしも、退院してすぐに更新の時期が重なっていたら、更新は難しかった。いや、その頃だったらダメだっただろうと思っています。
また、私は医師が一筆書いてくれた書類を準備せずに試験場に向かいました。これは悪手でしたね。
可能であれば、医師の許可を得ていることが証明できるものを準備して、更新の手続きをした方が、話し合いがすんなり進むようと思います。
書類を準備しなかったため、病気の始まりから結末まで、自分の口で事細かに説明することになりました。
言葉を発しづらいと会話することにすごく抵抗を持つと思います。私にもあります。証明できるものがあれば、声に出して説明する部分が減り、体の負担が減らせたでしょう。
何を話しているのか分かりづらい(というより分かろうとしてくれても難しい。)私の言葉でも、担当の方は聞いてくれました。
あくまでも推測ですが、話している内容、整合性がとれているか?そういった部分は脳の働きを見極めるために見られているのかもしれません。
意識を失うことがなければ、書類裏面の申告は必要ないのでしょう。だけど、自分の中に少しでも心配があったら病気になったことを申告しておくべきです。
違反をしていなければ、最寄りの警察署でも免許を更新できます。
しかし、病気になった後は、試験場まで足を運んで更新したほうが確実だと思います。試験場では別室で自分の状況に対して受け答えしてくれる方がいます。最寄りの警察で状況の判断ができる方が常駐しているかはわかりません。
試験場では別途、相談を受けてくれる窓口もあるそうです。前もってそこに訪れることもありでしょう。
最悪の場合、免許が失効になることも覚悟していましたが、無事に免許を更新することができました。
症状が重く更新ができないと判断された場合、2年間だったかな?状態が好転した場合、免許を更新できるようです。
退院後、初めての免許の更新を不安になることがたくさんあります。自分がそうだったからすごくわかります。
危篤と判断され、心臓手術を3回繰り返し、心臓についた菌が脳へと飛んだ私でも、更新できました。
それはリハビリを重ねて身体能力を少しずつ取り戻した賜物でもあります。すぐに結果が見えなくても術後のリハビリはあきらめずにつづけたほうが絶対にいいです。
一朝一夕に効果を実感できることなんて、まずありません。私だって未だに発展途上です。立ち上がったときにバランスをとることに失敗してひっくり返ることもあります、お茶を飲んでひどくむせることも頻度は減ったけどあります。一般的な生活をおくっていると失敗することはたくさんあるけど頻度は確実に減っています。
健康な人だって絶対に失敗しないなんてありえません。私達は体を壊したことで頻度が増えただけ。リハビリすることで頻度は減ります。いきなり元に戻りたいと思っても無理です。少しずつでも続けていれば実感できる時が来ます。
無事に免許を更新できたら、安全運転で次回の更新を待ちましょう。
終わりに(参考リンクと引用)
私が住んでいる神奈川県の県警のページに運転免許試験受験希望者の適性相談のページを見つけました。本文中で私が体験してきたことを更に深く感じてもらうために引用とリンクをはらせていただきます。
他の都道府県にもそれぞれにページがあるかもしれません。
平成26年6月1日から道路交通法の一部改正により、「一定の病気」に該当することを理由として免許の取消しを受けた方が、取消し日から3年以内に病状が快復した場合、学科試験・技能試験免除で再取得できるようになりました。
ただし、
免許申請時や更新時に提出した質問票に虚偽の回答をした方
一定の病気に該当とすること等を理由として免許の取消しを受けたため、違反行為等を理由とする免許の取消しを受けなかった方(例えば、病気で取消処分を受けたが、交通事故による取消処分にも該当していた場合)
初心運転者で、再試験を受けるべきであったにもかかわらず、一定の病気に該当すること等を理由として免許の取消しを受けたため、再試験を受けなかった方。
は、対象外となります。
※ 病状が快復しているかどうかの確認及び対象の方か否の確認等に、日数を要しますので事前に運転免許試験場内の適性相談室まで身分証明書持参の上、御相談にお越しください。
質問票に虚偽の回答をして免許が取り消しとなった場合、取り消し日から3年で快復しても学科、技能試験免除で再取得できないようです。
以下の病気は、医学的な判断結果の証明が必要になる場合があります。
統合失調症、うつ病等の精神的な病気等
てんかん
不整脈、ペースメーカーや植込み型除細動器等を植込んでいる。その他意識消失を伴うもの
低血糖(糖尿病で意識消失を伴うもの)
重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
認知症
脳出血、脳梗塞、くも膜下出血等脳に関する病気
アルコール依存症、薬物中毒症
筋力、神経系の症状を呈する筋ジストロフィー、パーキンソン病
その他運転に支障のあるもの
やはり脳梗塞は診断書が必要な場合があるようです。
更新の前に担当医と話をした方が良さそうですね。心内膜症や僧帽弁閉鎖不全はこの文面だと関係なさそう。。私だって菌が脳に飛ばなかったら脳梗塞で意識消失することもなかったはずだから。少なくとも喋りづらくはなっていないはず。
より詳しく、確実な内容はこちらのリンクをご覧ください。
神奈川県警のページに質問票の内容とQ&Aが載っています。
福岡県警のものもありました。

最後までお読みいただきありがとうございました。
免許の更新を終えて心配がなくなりますように。